水平線

研究と批評.

2020-01-01から1年間の記事一覧

『空に住む』(青山真治)

青山真治の作品は、『Helpless』・『EUREKA ユリイカ』・『サッド ヴァケイション』の”北九州三部作”や『共喰い』、あるいは『チンピラ』や『WiLd LIFe』におけるヤクザとの闘争に巻き込まれることに象徴的なように「土着性」、「血縁」がどこまでも回帰する…

『スパイの妻』(黒沢清)

黒沢清の映画では、たびたび内面の「空白性」が描かれている。福原優作(高橋一生)と聡子(蒼井優)の関係性においてもその萌芽は見て取れる。だが、この「空白性」から生じる「言語化不可能」、「理解不能」という解釈こそ黒沢映画の特徴でもあるだろう。…

『カリスマ』(黒沢清)

冒頭の徹夜続きの警察官である藪池(役所広司)の風姿がこの社会の「法則」を物語っているかのようだ。われわれは「労働力の所持者」(マルクス)であれ、労働の形式的従属・包摂は実質的に転化し「賃労働者がその固有性ー属性を失いつつある」(沖公祐)の…

『アカルイミライ』(黒沢清)

皮肉なタイトルだ。「アカルイミライ」が将来待っているはずだと心底から信じることなど可能だろうか。それは、あまりにニヒリストだと批判するかもしれない。だが、オプティミズムに信仰することがそれ以上にニヒリズム的であり、「再帰的無能感」に苛まれ…

微光

6一2の証明が4であることよりも 僕にはそれがネギを切り刻み続けるような 言葉の物質性が憂懼だった もしも世界が嘘だけで飾り付けられているなら 祈りは対等になる 夢が嘘に遭逢することがあれば 嘘は祈りとなるだろう 風葬されそうな言葉を肺の水底に着飾…

『寝ても覚めても』(濱口竜介)

甘美でどこか頽廃的な美しい夢。人は誰しも忘れることのできない恋愛を経験している。罪の意識から新たな恋愛ができない人、過去の恋愛を忘れ去るために順次と恋愛に励む人。そこには無数の物語が存在する。だが、それらの経験は過去の記憶における中心的事…

ツイッター・デモ、あるいは催涙ガス

どうやらツイッター・デモに人民は、賭けたようだ。事の経過は、国会で審議が開始した検察庁法改正案への抗議であるらしい。「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグが、現時点でTwitterという表象空間に470万件以上(5.11時点)ツイートされて…

大義を求めよーーパンデミック、資本、階級

「ウイルスの独白」(https://hapaxxxx.blogspot.com/2020/03/blog-post_30.html?spref=tw&m=1)によると、ウイルスとは「生の連続体」であり「知性」を内在した「救世主」である。続けてこう語る。「わたしのおかげで、みなさまは経済をとるか生きるかとい…

災厄の理想郷ーー「災害ユートピア」と市民社会の臨界

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染・拡大が止まらない。中国を発現とし、世界的に拡大し続け、様々な影響が出ていることは周知の事実だ。国内においてもマスクの品薄、そして卒業式や入学式、大規模なイベントやライブの自粛を求めるよう政府は声明を出…

驟雨

溜め息色した通学路 悲哀を優しさに変えたつもりでね 消えていった夢を不意に数えながら 僕は、残された夢の整理をしていた 駅の地下通路からは浮浪者の眼差し 瞬間ごとの永遠の闘争からも逃走してしまうのか 白痴ーー、眩暈ーー。 幾人もの幽霊たちが無数の…

小文字aのアナーキズム、あるいは大文字Aの他者

1999年のバトル・イン・シアトル以降、世界的に浮上してきたのはアナーキズム的潮流であったという言説がアカデミックにおける一般的通説として流布している。だが、そもそもシアトル以前/以後で切断するのは早急ではないだろうか。 絓秀実が言うように68年…

『パラサイトーー半地下の家族』(ポン・ジュノ)

ポン・ジュノは、社会が不可視にしようとする「暗部」を象徴的に描くことを度々する映画監督だ。『殺人の追憶』の用水路やヒョンギュが暗いトンネルの奥へと消えるシーンや『グエムルー漢江の怪物』の下水道などが挙げることができる。そして、『パラサイト …