水平線

研究と批評.

驟雨

 溜め息色した通学路

 悲哀を優しさに変えたつもりでね

 消えていった夢を不意に数えながら

 僕は、残された夢の整理をしていた

 

 駅の地下通路からは浮浪者の眼差し

 瞬間ごとの永遠の闘争からも逃走してしまうのか

 白痴ーー、眩暈ーー。

 幾人もの幽霊たちが無数の毛穴に侵入し、意識を犯し蝕む

 強烈な吐き気を催し、僕は分解される

 毒をーー、蜜をーー、香をーー、打ち消そうーー

 いつか、連帯の挨拶を交わしましょう

 僕も闘い続けますから

 

 この世界には傷痕しかないようだ

 出来事の痕跡には言葉はない

 だけど、分有されることのない傷痕は言葉を求め続ける

 飢えと渇きの求めに応答できるだろうか

 貧しさと嘆息すら漏れてこない、眠気のまま漂流するだけの疲れ切った僕たちに

 

 不眠症の東京

 汚物に塗れた〈肉片〉の海

 肉と精液できている世界で「愛」と囁いてごらん

 36.0℃の屍骸の群れでは真実は生まれないから

 

 驟雨ーー

 

 薄靄がかかった時間が流れ、空気が淀めば淀むほど

 僕の体内を流れる血が濃くなることがわかった

 天使の快楽は、僕たちの痛苦でしかないんだってさ

 

 真昼の東京で、僕は天使の到着を待っていた

 27歳になる頃にはきっと迎えに来ることだろう

 そのときには、冷たい唇で冷血な接吻を交わしてやろう

 そして、僕は言葉の世界で死んでやるのさ